本店と本社の違いとは?実例ベースでわかりやすく解説【最新版】

 

本店と本社の違いとは?登記・実務・上場企業の事例でわかりやすく解説


企業の住所を調べると、「本店」と「本社」が異なる場合があります。
どちらも“会社の中心”を指すように見えますが、法律上の意味と実務上の使われ方には明確な違いがあります。

■ 本店とは ― 登記上の「会社の住所」


本店とは、商業登記簿に記載される「会社の所在地」のことです。
株式会社に限らず、合同会社や一般社団法人など、すべての法人が登記上1つだけ本店を定める必要があります。

  • 会社法上、「1法人=1本店」が原則(例外なし)
  • 会社設立登記や定款変更、解散など、法的手続の基点となる
  • 税務署や都道府県、市区町村への届出住所も原則として本店所在地に紐づく

つまり、法律的にその法人を特定する住所が本店です。
引っ越しや移転を行う場合は、「本店移転登記」が必要になります。

■ 本社とは ― 事業運営上の「中枢拠点」

 
一方、本社とは法律上の定義がなく、経営や管理機能を担う事業拠点を指す実務用語です。
経営企画・人事・広報・財務など、会社の中枢業務を担う場所を指します。
 

  • 法律上の制約はなく、複数設けることも可能(例:東京本社・大阪本社)
  • 実際の経営判断や取引先対応は本社で行われることが多い
  • 上場企業では「本社=IR・メディア対応拠点」となることも一般的


したがって、本店と本社は一致している必要はありません。あくまで自称です。

■ 本店と本社が異なる理由

 
多くの企業では、次のような理由で本店と本社を分けています。

  1. 創業地とのつながりを残すため
    創業の地を本店として登記し、歴史や地域との関係を維持します。

  2. 人材・顧客アクセスを考慮して本社を都市部に置くため
    東京・大阪・名古屋などに本社機能を集中させ、実務上の利便性を高めます。

  3. 税務・登記・行政コストの最小化
    本店移転には登記・公告・印紙などのコストがかかるため、登記は動かさず本社だけ移すケースも多いです。

  4. 工場・研究所を中核とする製造業の文化
    「現場が原点」という思想から、主要工場を本店とする企業も少なくありません。


■ 上場企業で本店と本社が異なる代表的な事例

 

◇ ファーストリテイリング(ユニクロ・GU)

 
本店所在地:山口県山口市
本社機能:東京都港区六本木(東京ミッドタウン)

創業の地・山口県に本店を残しつつ、事業運営の中心は東京に移しています。
創業地を大切にする姿勢を示す一方、グローバル本社として都市機能を活用しています。

 

◇ 伊藤忠商事

本店:大阪市北区梅田
東京本社:東京都港区北青山

大阪にルーツを持つ商社で、現在も登記上は大阪が本店。
ただし、東京にも同等の規模を持つ「東京本社」を設け、実質的には二本社制を採用しています。

 

◇ 富士通

 
本店:神奈川県川崎市中原区(川崎工場)
本社:東京都港区東新橋(汐留シティセンター)→ 神奈川県川崎市中原区 (川崎工場)  ※2024年9月に移転

製造業らしく、登記上は生産拠点である川崎工場が本店です。
経営・管理機能は一時期東京の汐留にありましたが、2024年9月に川崎工場と川崎タワーに分散移転済みになります。
富士通は汐留時代も本店は川崎工場のままであり、本店を変えずに本社移転を行っているケースになります。