継続企業とは?

 

継続企業とは?

継続企業(Going Concern)とは、企業が将来にわたって事業を継続し、解散や倒産を予定していない状態を指します。
会計や監査の世界では、「継続企業を前提として財務諸表を作成する」という前提(=継続企業の前提)が置かれています。


一見当然のように思えますが、これは会計処理の根幹を支える非常に重要な前提です。

なぜ「継続企業の前提」が重要なのか?


企業が作成する財務諸表の多くは、「将来も事業を続ける」ことを前提に成り立っています。

例えば:
売掛金・在庫:将来、現金化されることを前提に資産として計上
建物・機械・のれん:将来の収益獲得に貢献するとして、耐用年数にわたり減価償却・償却を実施
引当金:将来の支出や損失に備えて見積計上することが認められる

ここでのキーワードは「将来」です。
将来にわたって企業が事業を続けると見込まれるからこそ、これらの会計処理が成り立ちます。

企業会計の基準(ルール)は、すべてこの「継続企業の前提」に依拠しています。

「継続企業の前提」が崩れたらどうなるのか?

もし企業が近い将来に事業を継続できないと判断される場合、通常の会計基準は適用できなくなります。

簡単に言えば:
・資産は換金可能価値で評価し、換金できないものは「価値がない」とみなされる
・減価償却や引当金の概念は成り立たない(将来を前提とできないため)

このように、継続企業の前提が崩れると、会計の基本的な仕組みそのものが変わってしまうのです。
したがって、「継続企業であるかどうか」は企業会計における最重要の前提の一つといえます。

経営者と監査人の責任

会計監査の枠組みでは、継続企業の前提に関して経営者と監査人の双方に明確な責任が定められています。

① 経営者の責任
・自社が継続企業として財務諸表を作成することが適切かどうかを評価する。
・継続企業に関する重要な事項がある場合には、企業会計基準に基づいて適切に開示する。

② 監査人の責任
・経営者の評価が妥当かを検証し、入手した監査証拠に基づいて「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象や状況」があるかどうかを判断する。
・重要な不確実性がある場合は、監査報告書で注記への注意喚起を行う。
・もし開示が不十分な場合は、意見表明に除外(限定)を付す。

まとめ

要するに、
・継続企業の前提は、企業会計を成り立たせる大前提。
・経営者はまず自社が継続企業であるかを評価・開示する責任を負い、
・監査人はその評価を検証し、必要に応じて報告書で言及する義務を負います。

このように、継続企業の前提は「当然のこと」に見えて、企業の財務報告の信頼性を支える極めて重要な考え方なのです。
<参考>
監査基準委員会報告書 570  継続企業